胃炎とは
胃の粘膜組織に病理検査での炎症が認められる状態を組織学的胃炎と呼びます。
胃が痛い、胃がむかむかする、胃が重いといった症状を自覚し、内視鏡検査で特に所見がなくても、症状から診断されるものは症候性胃炎と呼ばれています。
内視鏡検査で胃の粘膜に赤みがあったりすると、内視鏡的胃炎と呼ばれます。
従来は、胃に何らかの症状が起こっている状態を総じて胃炎と呼んでいましたが、近年はピロリ菌感染が原因となるケースや、機能性ディスペプシア(FD)のような胃の機能低下・機能障害が原因となる胃炎などといった形で分類されるようになっています。
胃炎の種類
慢性胃炎
ピロリ菌感染が原因となるケースが全体の約8割に及びます。
慢性胃炎の原因がピロリ菌の場合、自覚症状がないからといって放置すると、将来的に胃の粘膜が萎縮し胃がんを発症するリスクが高まります。
そのためピロリ菌を退治する治療(除菌治療)をおすすめします。
吐き気、胸やけ、胃痛、胃もたれなどの症状がある場合は胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤や、胃の粘膜を胃酸などの刺激から保護する胃粘膜保護薬、胃腸の働きを改善する運動機能調整剤などで治療します。
萎縮性胃炎
胃粘膜の萎縮が進行するにつれて胃がんが発症するリスクが高まるため注意が必要です。
定期的に胃カメラ検査を受けていただくことで、早期の胃癌を発見することができます。
ピロリ菌検査で感染を認めた場合は、ピロリ菌を退治する治療(除菌治療)をおすすめします。
治療でピロリ菌が消えた(除菌できた)場合、胃潰瘍と胃がんのリスクは1/3程度に低下します。
しかし除菌できても胃がんのリスクはゼロにはならないため、引き続き定期的な胃カメラ検査が望ましいと思われます。
萎縮性胃炎・慢性胃炎の症状
- 胃が重い
- 胃がむかむかする
- 胸やけ
- 胃の痛み
- 吐き気
- 食欲不振
- 腹部の張り(腹部膨満感)
など
萎縮性胃炎・慢性胃炎の原因
ピロリ菌の感染
自己免疫性胃炎
胃粘膜から分泌される胃液には食物を消化したり、体の外から細菌が侵入することを防ぐために塩酸と同じくらい強い胃酸が含まれています。
通常の細菌は胃に入ると胃酸によって死滅してしまいますが、ピロリ菌はウレアーゼという特殊な酵素をもっていて、アンモニアを作りだすことができます。
胃酸をアンモニアで中和することで、ピロリ菌は胃の中に棲みつくことができます。
ピロリ菌はアンモニアとサイトトキシンという毒素を作りだすことで胃粘膜にダメージを与え、慢性的な炎症をおこします。
炎症が長く続くことで、胃の粘膜は傷つき萎縮します。
萎縮性胃炎
慢性胃炎の長期化
胃の粘膜が萎縮してしまうと腸上皮化生(胃粘膜が腸粘膜に似た状態に変性すること)を伴うようになり、がん化するリスクが高まると考えられています。
萎縮性胃炎が胃がんへ進行する流れ
ピロリ菌感染による慢性胃炎が長期間にわたると、胃粘膜が薄く脆い状態となる萎縮性胃炎へと進行します。
胃が萎縮してしまうと腸上皮化生(胃粘膜が腸粘膜に似た状態に変性すること)を伴うようになり、最終的にはがん化するリスクが高まると考えられています。
慢性胃炎(萎縮性胃炎)はがん化リスクがある状態です。
胃がんの発症を防ぐために定期的な胃カメラ検査と適切な治療を行っていく必要があると言えます。
胃がんへの進行の流れ
① 慢性胃炎
② 萎縮性胃炎
③ 腸上皮化生
④ 胃がん
萎縮性胃炎・慢性胃炎の検査
胃粘膜に萎縮が見られる場合は胃がんへと至るリスクがありますので、ピロリ菌感染の有無を含め的確に診断し、適切な治療を受けていただくことをお勧めします。
また胃がんの早期発見のため、萎縮性胃炎といわれた事がある方は1年に1回程度の胃カメラ検査をおすすめします。
当院では日本消化器内視鏡学会専門医が胃カメラ検査を行っており、精度の高い検査で患者様の病状を的確に見極めていきます。
萎縮性胃炎・慢性胃炎の治療方法
「薬物療法」「ピロリ菌の除菌治療」「生活習慣の改善」の3つが萎縮性胃炎・慢性胃炎の治療において重要となります。
薬物療法
胃が痛い、胃がむかむかする、胃が重いといった自覚症状がある場合は、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤や、胃の粘膜を胃酸などの刺激から保護する胃粘膜保護薬、胃腸の働きを改善する運動機能調整剤などで治療します。
市販薬で一定の効果を感じる方もいらっしゃいますが、胃がんの症状の可能性もある為、専門医に相談し適切な検査と診療を受けてください。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌を退治することを除菌といいます。
胃酸分泌抑制剤と2種類の抗生物質を、1日2回を1週間内服します。
内服が終了して4週間以上たってから、ピロリ菌の検査を受けていただき、除菌の治療が成功したか判定します。
最初におこなう除菌治療を一次除菌療法といい、成功率は80~90%と報告されています。
一次除菌でピロリ菌が消えなかった場合に行う治療を二次除菌療法といい、2種類の抗生物質のうち1つを別の薬に変更します。
二次除菌療法の成功率は85~98%と報告されています。
二次除菌療法までは保険診療で認められています。
三次除菌療法に関しては、現時点では研究段階で保険診療では受けられず、専門の施設へご紹介させていただきます。
保険診療でピロリ菌の検査と除菌療法を受けられる患者様は
- 胃カメラ検査またはバリウム検査で胃潰瘍、十二指腸潰瘍と診断された方
- 早期胃がんの内視鏡治療後の方
- 胃MALTリンパ腫の方
- 特発性血小板減少症の方
- 胃カメラ検査で慢性胃炎と診断された方
となります。
除菌療法の副作用として
- 下痢,軟便
- 味覚異常
- 発疹やかゆみなどの皮膚症状
- 肝機能障害
- 白血球減少、好酸球増多
などが報告されています。
下痢や軟便は、抗生物質の内服で腸内細菌叢が乱れることによっておこります。
軽い下痢や軟便でしたら整腸剤を一緒に内服しながら、除菌のお薬を飲み切ることが除菌療法の成功につながります。
ただし、下痢や味覚障害などの症状が強くなった場合は無理をせず、速やかにご相談ください。
腹痛や発熱をともなう下痢や、血便を認める場合、発疹やかゆみなどの皮膚症状を認めた場合は内服を中止して、速やかにご相談ください。
二次除菌療法で使用するメトロニダゾールの副作用として、飲酒をした時に吐き気、嘔吐、腹痛やほてりなどの症状が現れやすくなります。
二次除菌療法の最中は禁酒が望ましいと思われます。
生活習慣の改善
暴飲暴食はしない、カフェイン飲料や香辛料などの刺激物を過剰に摂取しない、飲酒喫煙を控えるといった生活習慣を正すことが大切です。