このような症状がある方へ
このような症状がある方はご注意ください。
- おなかが張ってくるしい
- 食欲不振
- 嘔吐
- おならが出ない
- 便が出ない
腹部膨満感がおきる仕組み
腸にガスがたまっておなかが張るタイプと、胃腸の動きが悪くなっておなかが重苦しくなるタイプがあります。
動物性タンパク質や脂質の多い食物や、食品添加物が多く含まれた飲食物を摂ると、腸内でうまく吸収されず、腸内細菌のバランスが崩れ悪玉菌が増え、過剰なガスが発生します。
便秘してガスがうまく出ないとお腹が張ります。
早食いをすることで食事と一緒に空気を飲み込んでしまったり、ストレスなどで過換気になり空気を飲み込んでしまうことでも、腸にガスがたまりお腹がはります。
過敏性腸症候群など、自律神経のバランスが崩れることで、胃腸の働きがわるくなることで膨満感を認めることがあります。
膨満感を引き起こす疾患
便秘
便秘になり、腸管の中に便がたまり過ぎるとおなかが張ります。
また便が溜まっていると腸内の悪玉菌がガスを発生させ、おなかがはります。
便秘の方は腸の動きが悪いことが多く、ガスをうまく出せないことが多いことも、膨満感の便秘はその他の疾患の症状として現れていることもあります。
また、慢性的な便秘によって痔などの病気が発症したり悪化することがありますので、なるべく早めにご相談ください。
腸閉塞
何らかの原因で、飲食物、胃液や腸液、ガスなどの腸の内容物が流れなくなった状態を腸閉塞と呼びます。
かつては腸閉塞とイレウスは混同されていましたが、現在では物理的に腸の内容物が流れにくくなって生じる腸閉塞と、腸の機能(ぜん動)などに問題が生じて起こるイレウスに大別されます。
イレウスに関しては別項で解説します。
腸閉塞の原因として
- 開腹手術後の癒着(腸とお腹の壁、腸と腸がくっつき、ひしゃげてしまう状態)
- 腫瘍(大腸がんなどで、腸がふさがってしまう状態)
- 異物(巨大な胆石などで、腸がふさがってしまう状態)
- 腸の捻転(腸がねじれてしまうことによって、ふさがってしまった状態)
- 径ヘルニア嵌頓(腸の一部が、ヘルニア門という腹壁や鼠径部のすき間にはまり込んで、お腹に戻らなくなった状態)
などがあります。
血流障害がない「単純性腸閉塞」と、血流障害を伴う「複雑性腸閉塞」に分類されます。
いずれも吐き気や、嘔吐、お腹の張り、ガスが出ない、便が出ないなどの症状を認めます。
単純性腸閉塞の場合は、イレウス管というチューブを挿入し、閉塞部より口側にたまったガスや腸液を抜き、腸の張りをとることで多くの方は改善します。
複雑性腸閉塞の場合は、腸に血液が流れなくなることで、腸が壊死して穴が開いてしまったり、バリア機能が低下した腸管から細菌感染を起こし、菌血症や多臓器不全などの重篤な病気を発症するリスクが極めて高くなります。
救命のためにも緊急手術が必要となります。
いずれの腸閉塞も入院治療が望ましいため、入院が可能な提携医療機関をご紹介させていただきます。
イレウス
腸管の動き(ぜん動)が低下したり麻痺することで、飲食物、胃液や腸液、ガスなどの腸の内容物の流れが止まった状態をイレウスといいます。
イレウスは、開腹手術の後に腸管が麻痺した時や、腸炎や腹膜炎などの炎症で腸の動きが悪くなった時、お薬の副作用などで起こることがあります。
尿管結石や胆石発作などの激しい痛みでも、腸の動きが悪くなることがあり、イレウスとなることがあります。
吐き気、嘔吐、おなかが張る、おなかが痛い、ガスが出にくいなどの症状を認めます。
飲水やお食事をお休みして点滴しお腹を安静にすること、イレウスの原因となっているお薬をお休みすることなどで、多くの方は改善します。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、腹痛、お腹の張りや不快感、下痢、便秘などの症状を認めますが、血液検査や内視鏡検査で異常を認めません。
腸の動きを制御する自律神経の異常が発症に関係しているとも考えられています。
脳と腸は自律神経でつながっていて、脳がストレスを感じると自律神経のバランスがくずれ、腸の動きが乱れて下痢や便秘など便通異常の症状が出ると考えられます。
痛みを感じやすい「知覚過敏」の状態となり、ちょっとした腸の刺激でも強い痛みや、膨満感などの違和感を感じやすくなります。
食生活、ストレス、腸内細菌のバランス、遺伝なども関係していると考えられています。
呑気症
私たちは食べたり飲んだりする際に、気付かないうちに一緒に少量の空気をのみ込んでいます。
これは自然なことで、あまり問題になることはありません。
仕事などでストレスがかかり緊張した際に、唾液と一緒に多量の空気をのみ込んでしまう病気を呑気症(空気嚥下症)と呼びます。
胃腸に多量の空気がたまることで、げっぷやおならが頻回になったり、腹部膨満感を認めたりします。
その他、げっぷが出る際に空気と一緒に胃酸が逆流すると、胸焼けなどの逆流性食道炎の症状を認めることがあります。
人前でげっぷやおならをしてはいけないと思うことが、ストレスになり、さらに空気をのみ込んでしまうという悪循環になることがあります。
吞気症の解消法としては、ストレスをため込まない、食事の際やゆっくりよく噛んで空気をのみ込まないように心がけるなどがあります。
逆流性食道炎逆流性食道炎は、本来であれば逆流が起こらないように食道と胃のつなぎ目をしめつけている横隔膜の働きが悪くなりしまりが悪くなることや、加齢に伴って食道と胃のつなぎ目にあたる下部食道括約筋が緩むことで発症します。
食べものや飲みものを胃の方へ運びこむ蠕動運動が低下することによっても、発症すると考えられています。
胃酸が逆流し、食道粘膜に炎症を起こす病気を逆流性食道炎と呼びます。
主な症状として胸やけ、げっぷ、呑酸、みぞおちの痛み、腹部膨満感などがあります。
食べ過ぎ、脂っぽい食事、アルコールの飲みすぎ、加齢、肥満、便秘腹部の締め付けなどが、症状を悪化させます。
一度症状が改善しても再発率が高いという特徴があります。
患者様の数は年々増加しており、食道の炎症が慢性化するとがんを発症するリスクが高くなります。
急性胃腸炎
急性胃腸炎の多くは細菌感染やウィルス感染によって発症します。
その他の原因として、アレルギーや暴飲暴食、抗生物質内服後に起きることがある薬剤性腸炎などがあります。
吐き気、嘔吐、下痢、食欲低下、発熱、腹部膨満感などの症状を認めます。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは、胃の違和感(胃もたれ、胃のむかつき、胃痛など)、みぞおち付近の痛み、膨満感やお腹の違和感が起こっているにも関わらず、胃カメラ検査や血液検査をしても特に問題が見つからない状態のことです。
過労や睡眠不足などの生活習慣の乱れやストレスで、自律神経のバランスが崩れると、胃腸の機能や胃酸分泌能が乱れたり、胃腸が知覚過敏の状態になり、機能性ディスペプシアの症状を引き起こすことがあります。
腹部の腫瘍
胃がん、肝臓がん、膵臓がん、大腸がんなど、がんそのものが大きくなり腹部膨満感を認めることがあります。
おなかにがんが有ることで、腸のぜん動運動が低下したり、腸閉塞になると、おなかにガスがたまり、腹部膨満感を認めます。
また、女性の場合は卵巣腫瘍や子宮筋腫・がんなどが原因となることもあります。
がん細胞が腹膜に転移し、腹膜播種した状態になると、腹水がたまることで膨満感を認めることがあります。
上腸間膜動脈症候群
十二指腸の水平脚と呼ばれる部位の前方には上腸間膜動脈という血管があり、水平脚の後方には腹部大動脈という血管があります。
十二指腸の水平脚はこの2つの血管に挟まれています。
急激な体重減少などで、この2つの血管の間にある脂肪がやせてしまうと、十二指腸の水平脚は2つの血管に圧迫され、腸閉塞の様な症状を認めます。具体的には食事をとると上腹部が痛む、吐き気があり嘔吐する、胃がもたれる感じがする、腹部膨満感などの症状があげられます。
仰向きで寝ることで、十二指腸の水平脚が2つの血管に圧迫され、症状が悪くなり、うつ伏せや左側を下にして寝ることで、症状が軽くなります。
成長期で急に身長が伸びる際に急にやせたり、ダイエットで急激に体重が落ちた際などに好発します。
膨満感の検査
血液検査
腹部膨満感の原因を検討する際に、血液検査はとても重要な役割を果たします。
急性胃腸炎
感染性腸炎(ウィルス性、細菌性)では炎症反応が上がることがあります。
中でも細菌性腸炎の場合は白血球数が増える特徴があります。
アレルギーによる急性胃腸炎では、好酸球数が増えることがあります。
イレウス、腸閉塞
急性膵炎が原因で、腸管が麻痺してイレウスになっている場合は、膵酵素の上昇や炎症反応の上昇を認めることがあります。
腸管の血流障害を伴う複雑性腸閉塞では、筋肉が壊れることで、筋肉中に含まれる物質(AST, LDH,
ALP, CPK)が血液中に漏れだし、血液反応にあらわれることがあります。
腫瘍
おなかに出来たがんなどの腫瘍が原因の場合は、腫瘍マーカーの数値や、炎症反応が上昇することがあります。
がんが出来ていても腫瘍マーカーが上昇しないこともあります。
腫瘍マーカーが高くないから、がんではないと言い切ることはできませんので、慎重に対応することが望まれます。
腹部レントゲン
腸閉塞で腹部が膨満している場合は、入院治療や緊急手術の要否を早急に検討する必要があります。
腹部レントゲンで腸閉塞が疑われる際は、腸閉塞の原因や腸管の血流障害の有無を評価するために造影CT検査が必要になります。
造影CT検査を実施している提携医療機関を紹介させていただきます。
腸閉塞に特徴的なレントゲンの所見
腸が閉塞している部分より、口側にガスと液体がたまるため、口側の腸管が拡張します。
立った姿勢(立位)でレントゲンを撮ると、ガスは上に液体は下にたまり、コップに水を注いだ時の水面の様に見えます。
これをニボー像(鏡面像)と呼びます。
ニボー像は腸閉塞に特徴的なレントゲンの所見ですが、拡張した腸管の中が液体で満たされていて、ガスの貯留がほとんど無い場合は、二ボー像を認めないことがあります。
寝た姿勢(仰臥位)でレントゲンを撮影する場合は、二ボー像は見えなくなりますが、拡張した腸管と、小腸のひだ(ケルクリングひだ)が良く見えます。
S状結腸軸捻転の際のレントゲンでは、ねじれたS状結腸にたまったガスが、巨大なコーヒー豆の様に写り、coffee
bean signと呼ばれます。
エコー検査
腹部エコー検査で、お腹の臓器を詳しく観察し、腹部膨満感の原因を調べます。
腫瘍ができていないか?おなかに水がたまっていないか?便秘していないか?など、詳しく観察し診断します。
腹部エコー検査でおなかの水(腹水)を認めたら、腹水の原因を検索するため、追加の検査を検討します。
肝硬変、腎不全、心不全、悪性腫瘍、低栄養状態など腹水がたまり易い病気をお持ちの方は、腹部エコー検査を受けていただくことで、腹水の有無など確認することができます。
腸閉塞が疑われる際は腹部エコー検査で、腸のどこが閉塞しているか調べることができます。
腹部エコー検査は、被ばくの心配が全くありません。妊娠中の方やお子様でも安全に受けていただくことができます。
大腸カメラ検査
便秘と下痢をくり返す、ガスが出にくくおなかが張る、など大腸が腫瘍で狭くなっていることが疑わしい症状がある場合は、大腸カメラ検査を検討します。
大腸癌による大腸閉塞が疑われる場合は、レントゲン検査やCT検査を優先することもあります。
大腸癌から腸閉塞を発症した場合は、入院治療が必要になります。
入院加療が可能な提携医療機関を紹介させていただきます。
大腸カメラを使用して、経肛門的イレウス管を挿入したり、大腸ステントを挿入することで、大腸にたまったガスや便を抜き、おなかの張りを軽くすることができます。
S状結腸軸捻転を発症した際は、大腸カメラで捻じれを解消したり、大腸にたまったガスを抜く治療を実施します。