こんな症状がある方へ
- 血便が出る
- 下腹部痛が長期化している
- 下痢と便秘の症状が交互に繰り返す
- お腹が張るなどの異常が長期化している
- 細い便が出る
- (食事の量は変わっていないのに)気づいたら体重が減少していた
- 吐き気・嘔吐の症状がある
- 貧血の症状がある
上記に当てはまる場合、大腸がんの可能性があります。
また、早期の大腸がんはほとんど症状がありません。
大腸がんは男女問わず発症リスクが高いがんであり、国民病とも言われ増加傾向にあります。
2021年の統計では、大腸癌の死亡者数は男性では2位、女性では1位、総合では2位と死亡者数が多いことが特徴です。
少しでも気になる症状がありましたら、自分には関係ないと目をそむけずに、なるべく早めに専門医へご相談ください。
早期発見・早期治療がとても大切です。
大腸がんとは
大腸粘膜に生じるがんを大腸がんと呼びます。
良性の大腸ポリープ(大腸腺腫など)ががんに変性することで生じるもの(腺腫-がん関連)と
大腸粘膜の細胞がダイレクトにがん細胞に変性して生じるもの(デノボ癌)に分類されます。
粘膜に生じたがんが進行して、粘膜下層という層よりも深いところに達すると、リンパや血液の流れにのって肺や肝臓などの他の臓器に転移する恐れもありますので、早期発見・早期治療が重要です。
大腸には、右から時計まわりに盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸S状部、直腸、肛門管の8つの部位に分けられます。
日本人は直腸やS状結腸に大腸がんができやすく、この二つの部位で全体の約70%を占めます。
最近では、食生活の欧米化や高齢化に伴って、大腸がんの発症数が増加傾向にありますので、自分には関係ないと軽視せずに、こまめに大腸カメラ検査を受けるようにしましょう。
大腸がんの原因
大腸がんの発症には欧米型の食生活や生活習慣、遺伝的要因、炎症性腸疾患が関与していると考えられています。
最近では、食生活の欧米化に伴って高脂肪・高たんぱくで食物繊維の少ない食事や加工肉を摂取する機会が増えましたので、大腸がんを発症するリスクが増していると言われています。
また、飲酒喫煙によっても発症リスクが高まるという報告もあり、注意が必要です。
心当たりのある生活習慣となっている方は、今一度日頃の生活習慣を改善していただき、リスクを抑えていきましょう。
また、遺伝的要因の関与については、ご家族の中に大腸がんの罹患歴がある方がいらっしゃる場合、ご自身の発症リスクも高いと思われますので、こまめに大腸カメラ検査を受けることをおすすめします。
大腸がんの検査
スコープを肛門から挿入し、肛門から盲腸に至るまでの大腸全体の粘膜の状態をくまなく観察します。
大腸がんの早期発見・早期治療に非常に効果的です。
検査中に疑わしい病変が発見されましたら、検査中に組織の一部を採取して、病理検査に提出することもできます。
また、前がん病変のポリープをその場で切除することが可能です。
早期の大腸がんの可能性が高い場合は、切除可能な施設へのご紹介を提案させていただきます。
大腸カメラ検査で早期発見できれば、大腸がんの発症率・死亡率を下げることが可能となります。早期発見のため、定期的に大腸カメラ検査を受けることをおすすめします。
大腸がんの治療
内視鏡治療
内視鏡的ポリープ切除術
(ポリペクトミー)
茎があるポリープが見つかった場合、茎の部分にスコープからループ状の細いスネアを取り付けて、高周波電流を流して切除します。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
平べったいポリープや腫瘍が見つかった場合、スネアが滑りかからないことが有るため、病変の下側に生理食塩水を注入し、病変にスネアがかかりやすい状態にしてから切除します。
外科治療(手術)
開腹手術
ステージ0からIでも内視鏡で切除が困難な場合や、遠隔転移が無いステージIIIまでの方が開腹手術の対象となります。
リンパ節転移の可能性があるいは、がんが生じた腸管とその周囲リンパ節を同時に取り除きます(リンパ節郭清)。
手術後に再発のリスクが高いと判断された場合は、手術後に抗がん剤による術後化学療法が実施されます。
がんが周辺の臓器に浸潤している場合は、浸潤した臓器も同時に取り除きます。
直腸は骨盤の深部の狭い部分に位置しており、直腸の周辺には排尿や排便、性機能をコントロールする神経や筋肉が密集しています。これらの神経や筋肉の切除が必要な場合は、手術後に排泄、性機能に支障をきたす恐れがあり、生活の質が著しく低下することがあります。
なお、がんの進行状態に応じて、筋肉や神経を温存することもできる場合があり肛門括約筋温存術、や自律神経温存術といった手術が実施されます。
腹腔鏡手術
胃や腸、肝臓などのおなかの臓器が入っている空間を「腹腔」と呼びます。
腹腔鏡手術とは、手術による患者様の体へのご負担を最小限にするために生み出された方法です。
開腹手術のようにおなかを大きく切開せずに、5〜10mm程度の小さな穴を複数開けます。
その穴からおなかの中を観察するスコープ(腹腔鏡)とマジックハンドのような専用の手術器具を入れて手術を行います。
最近では、手術器具のレベルも上がり、手術方法も定着してきたため、早期大腸がんを治療するメジャーな手法として考えられるようになりました。
腹腔鏡手術のメリット
- 傷が小さく、目立ちにくい。手術後の痛みが少ない。
- 手術後の回復が早い。
- お腹を開腹する手術と比べて、腸が空気に触れにくいため、手術の後の癒着がおきにくい。
- 出血量が少ない傾向がある。
腹腔鏡手術のデメリット
- 手術時間が長くなる傾向がある。
- 出血などを認めた際の対応が、開腹手術より難しいことがある。
放射線治療
高エネルギーのX線やγ線を体外から当てることでがん細胞の遺伝子を破壊し、がんを小さくしていきます。
補助放射線治療
切除可能な直腸がんの手術前の補助治療として実施される治療です。
「手術前にがんのサイズを小さくする」、「骨盤内からの再発防止」や「肛門機能の温存」などを目指していきます。
緩和的放射線治療
切除が困難な骨盤内のがんによって生じる出血や痛み、排便障害、骨転移によって生じる痛み、脳転移によって生じる吐き気やめまいなどの神経症状を和らげる(緩和する)目的で実施される治療です。
抗がん剤治療
(化学療法・分子標的薬治療)
もしくは、近年では大腸がんに対する化学療法は、数多くの臨床研究がなされています。最も効果的と考えられるお薬の組み合わせと治療のスケジュールについて最適なパターンがあり、レジメンと呼ばれます。
がん細胞は健康な細胞とは異なり、きわめて速い速度で細胞分裂をくり返すことで、どんどん大きくなる能力があります。
化学療法に用いられるいわゆる「抗がん剤」は、がん細胞がどんどん増えていくことを抑えることにより、治療の効果を発揮します。
がんの進行度合い(病期=ステージ)や、体力に応じた適切な治療方法を検討します。
化学療法がおこなわれる3つのケース
- 4期のように肺か肝臓など胃から遠くの臓器に転移し手術が難しいがんや、手術した後に再発した場合に行われる化学療法。「完治が難しい進行がんや再発がんでのQOL維持、延命のため」に実施されるものになります。
- 手術ができるけれども、リンパ節などに少しがん細胞が残る可能性がある場合や、手術後に再発する可能性が高い場合に行われる「術前化学療法」。
- CT検査や手術では目には見えないレベルのがん細胞が残っていて、手術の後に再発する可能性を下げるために行われる「術後化学療法」。 「手術後にがんが再発しないようにする」補助的な治療になります。
大腸がんの治療に効果的な抗がん剤が複数登場しており、患者様の病状に応じて最適な組み合わせや単独使用が検討されます。
化学療法による副作用には個人差があるため、効果と副作用を天秤にかけ、患者様それぞれに適したお薬の種類や量を慎重に検討する必要があります。