こんな症状がある方へ
以下のような症状に少しでも心当たりはありませんか?
- 食事の際に胸部に不快感がある
- 食物が胸のあたりにつかえる・つまる感じがする
- 気づかない間に体重が減った
- 熱いものを食べるとしみる感じがする
- 風邪を引いていないのに声がかすれている
- 背中や胸の奥が痛い
発症間もない食道がんは自覚症状がほとんどありません。
進行するにつれて胸やのどの不快感といった症状が起こります。
さらに進行すると体重減少を認めることがあります。
上記に少しでも当てはまる方は速やかに受診してください。
食道がんとは
食道はのどと胃をつなぐ直径約2~3㎝、長さは約25㎝程度の管状の臓器で、口から入った食べ物を胃まで運ぶ役割をはたしています。
食道がんとは、食道の粘膜で生じるがんのことです。
発症初期は食道粘膜の表面に生じます。
食道は他の消化管と違って外側を漿膜という膜でおおわれていないため、周囲にある気管や大動脈、心臓や肺などに浸潤(がんが染み込んでいくこと)しやすい特徴があります。
リンパの流れが豊富なため、胃がんや大腸がんと比べて早い段階で広範囲のリンパ節に転移する特徴があります。
やがん細胞が血液の流れにのって肝臓や、肺、骨などに転移するリスクが高い特徴があります。
食道がんは早期発見が大事になるので、以下の危険因子をお持ちの方は、定期的な胃カメラ検査をお勧めします。
危険因子としては、アルコール、タバコ、熱い飲食物、食道アカラシア、逆流性食道炎、バレット食道などがあります。
特にお酒を飲んで顔が赤くなる人、今は顔が赤くならなくても、お酒を飲み始めた最初のころに顔が赤くなった人は要注意です。
このような人はお酒を飲んだ時にできる、発がん性の物質であるアルデヒドを上手に分解できないため、食道がんのリスクが高まります。
喫煙と飲酒の両方の習慣がある方は、食道がんだけではなく、のどや口の中の癌のリスクも高まります。
また、胸やのどに不快感がある方も、早めの胃カメラ検査をおすすめします。
食道がんの危険因子
飲酒、喫煙によって食道がんが発症するリスクは高まります。
飲酒
お酒を飲むとアルコールが分解されて、
体内にアセトアルデヒドという発がん性物質が作られます。アセトアルデヒドの分解能力が低い方は、体質的にアルデヒド脱水素酵素(ALDH)という酵素の働きが弱く食道がんの発症リスクが高まります。
アルデヒドの分解能力が低いと、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすくなり、お酒を飲むと顔が赤くなる、吐き気がする、胸がドキドキする、頭痛がする、二日酔いになりやすい傾向があり、一般的にお酒に弱い体質と言われます。
お酒を飲みはじめた頃は、顔が赤くなったり、お酒に弱かったけれども、次第にお酒が飲めるようになったという方も、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きが弱く、飲酒を続けると食道癌のリスクがとても高くなるため、注意が必要です。
喫煙
タバコの煙には様々な発がん性物質が含まれています。
発がん性物質を含んだ煙が食道にダメージを与えることで、食道がんの発症リスクが高まります。
喫煙は、食道だけでなく、口の中のがん(口腔がん)、のどのがん(咽頭がん、喉頭がん)のリスクを高めます。
飲酒と喫煙いずれの習慣もある方は、危険率が相乗的に高まるとされているため、注意が必要です。お酒とタバコの両方をやめることが理想的ですが、どちらかをやめるだけでも、ある程度は発がんリスクが下がると報告されています。
逆流性食道炎
胃液などの胃の内容物が食道に逆流することで食道粘膜に炎症が起こり、呑酸や胸やけなどの症状が現れます。
もともと食道の内側は「重層扁平上皮」というもので覆われています。
対して胃の内側は「円柱上皮」という別の粘膜で覆われています。
逆流性食道炎によって本来の「重層扁平上皮」が痛み、治る過程で「円柱上皮」に置きかわった状態をバレット食道といいます。
食道との胃のつなぎ目の粘膜が、胃の粘膜のように性質が変化する状態のことを言います。
逆流性食道炎による慢性的な炎症がバレット食道の原因になります。
バレット食道から食道がんが発症するリスクが高まりますので、注意が必要です。
こまめに内視鏡検査を受け、状態を確認するようにしましょう。
食道がんの検査
胃カメラ検査
鼻や口からスコープを挿入し、上部消化管の異常を見つける検査であり、食道がんや胃がんの早期発見にきわめて有効な検査です。
上部消化管の内部を精緻に観察できるため、病変のちょっとした色の違いや凹凸についてもしっかり確認できます。
また、検査中に疑わしい病変が発見された際には、組織採取(生検検査)を行って病理検査に提出することで、細胞レベルの検査が可能となり、確定診断につなげられます。
発症後、間もない食道がんであれば、内視鏡的切除を行うことで完治を目指すこともできます。
食道がんの治療
食道がんの治療では、内視鏡的治療、手術、化学放射線療法、化学療法(抗がん剤)、放射線療法などを進行度合と全身の状態に応じて実施します。
発症後、間もないがんであれば内視鏡治療が可能です。
手術前にCTやMRIなどの画像検査で食道がんの広がりを調べた際に切除可能と判断され、手術に耐えられる体力があると判断された場合は、外科的手術の対象になります。
外科手術と化学放射線療法が組み合わせられることもあります。
食道がんは他のがんと比べて、化学放射線療法の効果が高いため、高齢者や基礎疾患があって手術が困難な場合には、化学放射線療法が選ばれます。
その他、化学療法単独、放射線療法単独、が用いられます。
手術で切除が可能なII期、III期の方に対しては、治療成績をあげるために手術の前に化学療法を行うことが推奨されています。
また、手術後に病理検査でリンパ節転移が判明した場合は、手術後の化学療法が検討されます。
内視鏡治療
食道の壁は大きく分けると4つの層からできています。
食道の内側から、粘膜層、粘膜下層、固有筋層、外膜といいます。
粘膜層をくわしくみると、内側から粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板に分けられます。
食道癌が粘膜筋板まで育ってしまうと、リンパ節に転移する可能性が高まります。
そのため、粘膜固有層までにとどまった食道がんが、内視鏡治療の対象となります。
なお、発症間も粘膜固有層までにとどまったがんに対してしか内視鏡治療は、実施できないものですので、早期に発見することが重要になります。
食道がんの内視鏡的治療を受けていただく際は、入院治療が必要となります。
外科手術
主にI期からIII期の患者さんが対象となります。
手術の前にCTやMRI、PETなどの検査でリンパ節やその他の臓器に転移がないか、詳しく評価します。
まずはがんのある食道部分を切除します。
がんが転移している可能性のあるリンパ節を取り除きます(リンパ節郭清)。
胃などを使って食道の代わりに食べ物が通る管をつくる再建術を行います。手術は7〜8時間かかることがほとんどです。
手術で切除が可能なII期、III期の方に対しては、治療成績をあげるために手術の前に化学療法を行うことが推奨されています。
放射線療法、 化学療法(抗がん剤)
胃がんや大腸がんと比べて、食道がんは放射線療法の効果が出やすく、多くの場合はがんが小さくなり、場合によってはがんが完全に無くなることもあります。
なお、治療でがんが消滅しなかった場合は、再びがんが成長し再発リスクがあります。
また、一度がんが無くなっても、再発のリスクがあるため、
治療後も定期的な内視鏡検査でフォローすることが重要です。