機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアとは、胃の違和感(胃もたれ、胃のむかつき、胃痛など)、みぞおち付近の痛み、お腹の違和感が起こっているにも関わらず、胃カメラ検査や血液検査をしても特に問題が見つからない状態のことです。
機能性ディスペプシアの症状
- 食後の胃もたれ、膨満感(食後膨満感)
- すぐにお腹が張り満腹になってしまう(早期腹満感)
- みぞおちが焼けるように感じる(心窩部焼灼感)
- みぞおちの痛み(心窩部痛)
主にみぞおち付近で不快感が現れます。
食後膨満感と早期腹満感を認める場合は、1.食後愁訴症候群
心窩部焼灼感と心窩部痛を認める場合は、2.心窩部痛症候群と分類されます
1の食後の胃もたれやすぐにお腹が張る感じは、胃腸の運動機能異常によっておこると考えられています。
2のみぞおちが焼けるような感じや、みぞおちの痛みは胃腸の知覚過敏によっておこると考えられています。
その他、げっぷ、吐き気、嘔吐などの症状が起こることもあり、みぞおち付近の不快感が長く続くことで食事ができなくなる恐れもあります。
機能性ディスペプシアの原因
胃には、食べ物が胃に入った時に、食道に近い部分が緊張をゆるめて食べ物を貯めておく「適応性弛緩」という機能や、食べ物を胃から十二指腸へ送りだす「胃排出能」という機能があります。
何かしらの原因でこのような胃の機能に支障をきたすことで、様々な症状が起こると言われています。
胃の運動障害
食べ物が胃に入った時に、食道に近い部分が緊張をゆるめて食べ物を貯めておく「適応性弛緩」が落ちると、少し食べただけですぐお腹がいっぱいになってしまいます。
消化管に食べ物が送られてくると、消化管にある筋肉(平滑筋)が収縮してその先の消化管へ食べ物を送ろうとする蠕動運動が起こります。
胃の蠕動運動が低下すると、「胃排出能」が落ちた状態になり、胃の中に食べ物が停滞することになります。
胃の中にいつまでも食べた物が残ってしまうと、すぐにお腹がいっぱいになってしまったり、吐き気をもよおしたり、胸やけをおこしたり、胃がもたれやすくなります。
胃・十二指腸の知覚過敏
胃や食道の粘膜が過敏になると、普段なら症状の出ないようなちょっとした刺激や、胃腸の動きでも痛み、吐き気、胃もたれなどが起こりやすい状態となります。
過度なストレス・トラウマ
生活習慣
胃酸
胃に食べ物が入る刺激で胃の中に胃酸が分泌されます。
また自律神経も胃酸の分泌に大きく関わっています。そのためストレスなどで自立神経の働きが乱れると、胃酸が過剰に分泌されたりします。
このような仕組みを胃酸分泌能と呼びます。
胃酸の濃度や量は胃酸分泌能の働きによってコントロールされています。
胃酸分泌能が乱れると、胃の中の胃酸と粘液のバランスが崩れ、胃もたれや胃痛、お腹の張りといった機能性ディスペプシアの症状が起きると言われています。
ヘリコバクター・ピロリ感染症
胃酸をアンモニアで中和することで、ピロリ菌は胃の中に棲みつくことができます。
ピロリ菌はアンモニアとサイトトキシンという毒素を作りだすことで胃粘膜にダメージを与え、慢性的な炎症をおこします。
ピロリ菌感染を放っておくと、炎症が長く続くことで、胃の粘膜は傷つき萎縮します。 最終的には胃がんの発症リスクが高まります。
ピロリ菌と機能性ディスペプシアの関係性についてははっきりわかっていませんが、ピロリ菌除菌に成功すると、胃痛や胃もたれなどの機能性ディスペプシアの症状が良くなるケースも報告されています。
機能性ディスペプシアの検査
胃カメラ検査は、胃・十二指腸潰瘍や、胃がんなどの重大な疾患が、症状の原因となっていないかチェックする上でも重要な検査と言えます。 その他、ピロリ菌の感染に関しても検査することができます。
当院で行う苦痛の少ない「胃カメラ」検査
当院では、鼻からカメラを挿入する経鼻内視鏡検査、または鎮静剤を使ってウトウトした状態で胃カメラ検査を受けていただくことで、患者様の苦痛を最小限に抑えられるように努めています。
胃カメラ検査を受けたことが無い方でも、安心安全に検査を受けていただけるようサポートいたしますので、みぞおちや胃の付近の症状がある方はぜひ一度ご相談ください。
機能性ディスペプシアの治療
患者さんが充分納得し満足できるくらい充分に症状が改善することが、治療の目標になります。 機能性ディスペプシアを引き起こす原因は複数ありますが、自律神経失調が発症に関係していることが多いと言われています。
機能性ディスペプシアの発症を防ぐために、食生活や生活習慣を見直すことが大切です。
日頃から休息・睡眠をしっかり取る、適度な運動を習慣化する、食事の栄養バランスを意識することで、生活習慣が乱れないようにしましょう。
また、ストレスを感じやすい方は、ストレスを解消するというよりは、どうやってストレスをうまくコントロールしていくかを考えると良いでしょう。
症状が日常生活に悪影響を及ぼす程につらいものであれば、症状をやわらげるために薬物療法を行います。
生活習慣の改善
- 疲れやストレスは適度に解消する
- 寝不足にならないようにする
- 習慣的に適度な運動を行う
- お酒を飲み過ぎないようにする
- なるべくタバコは吸わない、できれば禁煙する
- 無理のない範囲で節制する
- 運動不足にならないようにする
など
食習慣の改善
- しっかり噛んで早食いはしない
- 食べ過ぎないようにする
- なるべく一定の時間に食事をする・食事の栄養バランスを意識する
- 食後すぐの運動は控える
など
薬物療法
- 胃酸分泌抑制薬
- ピロリ菌除菌(ピロリ菌陽性の場合)
- 消化管運動機能改善薬
- 漢方薬(六君子湯)
- 抗うつ薬、抗不安薬
など